Morrolinux:オープンハードウェアへの険しい道のり ― ARMSoMとRockchip

Morrolinux: The Rocky Road to Open Hardware – ARMSoM and Rockchip

オープンハードウェアへの長い道のり:ARMSoMとRockchipを試す

プロセッサーからファームウェアに至るまで、すべてのコンポーネントが完全にオープンで、誰でも自由に利用できる「真のオープンハードウェア」は、いまだ実現が難しい目標です。

最近、RockchipのSystem-on-Chip(SoC)プロセッサーを搭載したARMSoM(Banana Pi)のシングルボードコンピューター(SBC)を2種類テストしました。これらのボードは、AIアクセラレーション、IoT接続、組み込みLinuxへの対応をうたっています。

しかし、本当によりオープンなコンピューティング環境への進歩を示しているのでしょうか。

この記事では、これらのボードが提供する機能、オープンハードウェアが依然として発展途上にある理由、そして私たちが今後克服すべき課題について考察します。

テストした製品は? ハードウェアの概要

今回テストした2つのボードは、どちらもRockchipのSoCを搭載しています。

  • ARMSoM Sige5:Rockchip RK3576 SoC、Neural Processing Unit(NPU)、デュアルGigabit Ethernet、Wi-Fi 6、拡張ストレージ用のM.2スロットを搭載しています。
  • ARMSoM P2Pro:SBCとマイクロコントローラーの中間に位置するボードで、IoT、オートメーション、産業用途を想定して設計されています。Power over Ethernet(PoE)に対応し、非常に低い消費電力を実現しています。

どちらも非常に高い性能を備えています。しかし、本当に重要なのは「どの程度オープンなのか」という点です。

Rockchipとオープンハードウェアのジレンマ

Rockchipは、Linuxコミュニティでも比較的よく知られているSoCメーカーの一つです。多くの競合メーカーと比較すると、少なくともLinux用のドライバーを提供している点は評価できます。

しかし、ここには問題があります。

  • これらのドライバーは、古いベンダー固有のLinuxカーネルのフォークをベースにしています。
  • そのままmainline Linuxに組み込めるようには設計されていません。mainline Linuxに対応させる作業はボランティアに委ねられており、コードの大部分を書き直さなければなりません。

つまり、これらのチップで長期的かつ適切にサポートされたLinux環境を実現するのは、非常に困難な道のりになります。

Collaboraのような組織の支援を受けたコミュニティ主導のプロジェクトは、RockchipのドライバーをLinuxのmainlineへ統合するために懸命に取り組んでいます。しかし、その作業は時間がかかり、難しく、しかも一貫性を保つのが容易ではありません。

オープンハードウェアへの長い道のり

これはRockchipだけの問題ではありません。業界全体が抱える、より大きな問題の一つの表れです。

ARMベースのSBCやその他の組み込み機器が真にオープンになるためには、次のような大きな障壁があります。

  • 不透明なサプライチェーン:ブートローダーやファームウェアなど、多くの重要なコンポーネントが依然としてプロプライエタリです。
  • 短いベンダーサポート期間:メーカーは、持続可能なソフトウェア開発よりも、製品の短期間での世代交代を優先することが少なくありません。
  • 真にオープンなSoCの不足:RISC-Vのようなプロジェクトには期待が寄せられていますが、現在の状況を変えるには、まだ初期段階にあります。

Rockchipは一部の競合メーカーよりもオープンな姿勢を見せています。しかし、業界全体として見ると、オープンハードウェアが現実のものになるまでには、まだ長い道のりがあります。

ARMSoM Sige5をテスト:AIアクセラレーション、その代償

Sige5の大きなセールスポイントの一つが、専用NPUによるAI機能です。最大6 TOPS(Trillions of Operations Per Second、1秒あたり数兆回の演算)の処理性能をうたっています。

しかし、よくあることですが、実際の性能はマーケティング上の説明と完全には一致しませんでした。

動作するもの

  • MobileNet、ResNet、YOLOv5など、事前に最適化されたモデルを実行する場合、AI推論速度は十分に優れています。
  • NPUは電力効率に優れており、同じ処理をCPUやGPUで実行する場合と比べて、はるかに少ない電力で済みます。

問題点

  • mainline Linuxに対応していないため、ベンダーが保守するDebianまたはAndroidのイメージを使用せざるを得ません。
  • 新しいファームウェアを書き込むにはプロプライエタリなツールが必要です。その一部はWindowsでしか利用できず、初期状態では中国語で表示されます。
  • エコシステムが分断されているため、より広範なAI開発ワークフローにこのボードを統合するのが困難です。

可能性は十分にあります。しかし、ソフトウェアとの統合が改善されない限り、実際の利用環境における使いやすさには限界があります。

ARMSoM P2Proをテスト:高い能力を備える一方、中途半端な立ち位置

P2Proは、SBCとマイクロコントローラーを組み合わせた興味深い製品で、IoTやオートメーション向けの仕様になっています。

Power over Ethernet(PoE)、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0に対応しており、このボードが産業用途やネットワーク接続された環境向けに設計されていることは明らかです。

しかし、電力効率に優れている一方で、RAMがわずか512MBしかないため、Linuxをフルに動作させるような処理では苦戦します。

また、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)にも対応していません。そのため、組み込み開発における選択肢としての魅力も低くなっています。

強力なソフトウェアサポートや明確な開発エコシステムがない現状では、P2Proは扱いの難しい中間的な位置にあります。堅牢なSBCでもなければ、シンプルで使いやすいマイクロコントローラープラットフォームでもありません。

それでも、より充実したドキュメントとmainline Linuxへの対応が実現すれば、P2Proはエッジコンピューティングやスマートオートメーションの分野で独自の地位を築ける可能性があります。

より大きな問題:オープンハードウェアには依然として大きな課題がある

RockchipとARMSoMをめぐる問題は、さらに大きな問題を浮き彫りにしています。

オープンソースソフトウェアは大きく進歩してきましたが、ハードウェアの自由という点では、まだ大きく遅れています。

特に大きな課題として、次のようなものがあります。

  • クローズドソースのファームウェアとドライバー: 多くの重要なコンポーネントが、依然としてコミュニティからアクセスできない状態にあります。
  • 短いベンダーサポート期間: 適切な長期サポートがなければ、デバイスはすぐに時代遅れになってしまいます。
  • 高い開発コスト: オープンハードウェアの代替製品は開発コストが高く、普及させるのも容易ではありません。

オープンハードウェアの代替手段はどこにあるのか?

RISC-VLibre-SOCのような取り組みは、業界に変化をもたらそうとしています。しかし、これらもまだ初期段階にあります。

現状は次のとおりです。

  • 「オープンハードウェア」の大部分は、部分的にしかオープンではありません。
  • コミュニティ主導のプロジェクトには、大手メーカーと競争するための資金が不足しています。
  • Open Compute Projectのような業界主導の取り組みも、既存の大手企業から抵抗を受けることがあります。

現時点では、Rockchipはより良い選択肢の一つです。しかし、プロプライエタリな設計が依然として支配的な業界においては、それほど大きな意味を持つ評価ではありません。

これからどうなるのか?

オープンハードウェアに向けて本当の意味で前進するには、業界に次のような取り組みが必要です。

  • RISC-Vのようなオープンなチップアーキテクチャへのさらなる投資
  • ドライバーをmainline Linuxへ統合するための、コミュニティ主導のサポート
  • メーカーにオープンなファームウェアを公開するよう促す、より強い働きかけ

それまでは、オープンハードウェアへの道のりは険しいままです。

(それでも、私たちは前進し続けます。)

もっと詳しく知りたい方は、MorrolinuxのYouTubeチャンネルで公開されている、私による完全版レビュー(イタリア語)をご覧ください。

Author

  • Moreno Razzoli

    My name is Moreno Razzoli. I have a degree in Computer Science, and I hold certifications in Linux from LPI, CompTIA Linux+, and Suse CLA. I am also an authorized Training Partner of the Linux Professional Institute. I have worked on various Open Source projects and have contributed to several existing projects on GitHub. Since 2008, I have been creating educational videos on YouTube and my official website.

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